日本のヒーローは世界のヒーローに
2023年夏WBC、日本のヒーローが世界のヒーローになりました。
サムライジャパンがやってくれましたね!大興奮を日本に届けてくれました。普段野球を見ることはなかったのですが、大谷翔平見たさに日本戦は全試合最初から最後まで見てしまいました。そしてちゃっかり大谷選手の魅力にハマりました。
大谷成功の秘訣としてよく取り上げられる曼荼羅チャート(詳しくは下記厚労省HP参照)。8つの要素の内1つに「運」を置き、運の良い人になるための方法として「読書」と書いています。
本屋で見かけて速攻手にした中村天風「運命を拓く」。読み終わってなんとなく、彼の底力を感じた1冊でした。彼がどのように読んだかは想像の域ですが、あくまで目標のための1つのツールとしてエッセンスを吸収したのでしょう。
ちなみに過去のインタビューなどで、大谷選手が愛読書と答えた本はこちらです。
・チーズはどこへ消えた(スペンサー・ジョンソン)
・成功への情熱(稲盛和夫)
・イーロン・マスクの野望
・論語と算盤(渋沢栄一)
・運命を拓く(中村天風)
本記事は「運命を拓く」について。読んでいてある名著と非常に似た所があるなぁと思い至りましたので、類似点を見ながら成功者の共通点を探ります。&大谷翔平の凄さも感じちゃおうという記事です。
成功者の共通点とは
中村天風「運命を拓く」
中村天風なる人を、大谷翔平経由で知った人は多いのではないでしょうか。かくいう自分もその一人ですが、本屋さん的にも嬉しいニュースですよね。大谷効果広し。
まずは天風さんの歩んだ波乱の人生を、非常に簡単ですがご紹介。
1876年生まれ、日露戦争時スパイとして活躍するも終戦後は肺結核で苦しむ。病床で読んで感動したアメリカの作者を現地に訪ねたり、コロンビア大学で医学を学ぶも望む答えは得られない。更なる答えを求めてイギリスに渡り、神経療法のセミナーを受講するが、そこの先生の言葉に失望する。
病を治す秘訣は「病を忘れる」それのみ
納得のいかない天風は、友人にフランスへ行くのが良いと勧められ、なんとフランス大女優サラ・ベルナールのお世話になる。彼女の紹介でドイツの著名な哲学者に会うなど、積極的に行動。だがついに納得の答えを得られないまま、失意の内に帰国の途へ着く。
天風が求めていたもの:
戦争当時は軍事探偵として活躍した快男児であったのに、一度病に冒されると心まで弱くなってしまった。心を強くするにはどうしたら良いのだろうか。
答えを求める一心でアメリカ・イギリス・フランスへと渡り歩いたのである。
運命の女神が微笑んだのは帰国の船の上での事。見ず知らずの人がにっこり笑って「私について来なさい」と言う。「奴隷買いだからついていくのはやめなさい」という忠告をよそに、何かを感じた天風は日本には帰らず、その人についてそのままヒマラヤへ行ってしまう。
運命とは不思議なもの。求め続ける人には、思ってもない方向から突然チャンスがやってくる。それをチャンスと思って掴めるかどうかは、当人の心次第。
果たして突然話しかけてきた人はヨガの聖者であった。求めて会った人からではなく、偶然出会った人から受けた、ヒマラヤでの学びこそが、その後の「天風」としての活動につながる。あれほど思い患っていた結核が、気づけば跡を残すのみで全く自身を煩わせる事はなくなったという。
怒り心頭した「病は忘れろ」という言葉も、振り返れば正しかったという事になるのでしょう。本書は天風として活動した時の講義録を集めたものになっています。
世界的名著ナポレオン・ヒル「思考は現実化する」
中村天風の本を読んだ時、これは東洋版「思考は現実化する」だと思いました。もちろん厳密に言えば色々違う箇所もありますが、核心部分が同じであることが面白いのです。
ナポレオン・ヒルの世界的名著「思考は現実化する」は、原題では”Think and Grow Rich”。いかにして金持ちになるかという1点に集中しており、“成功者“と言われる人達が何をしたかを徹底的に研究、その成功法則を体系化した本です。
ビジネスに特化しているだけに、仕事で成功するための秘訣が多く著述されています。1937年に発行された本ですが、現代でも言われるような「難しい問題は細分化」「自分がしてほしい事は、まず他人にしてあげる」などにも言及されています。
一方で、病気が出発点であった天風にビジネスの要素はありませんが、どちらにも共通して読めるのは精神面。ナポレオン・ヒルが「成功への1点集中」だとすれば、天風は「心の強さの1点集中」であり、様々な分野に応用が効くとも言えるでしょう。
東洋の天風が内面的なアプローチだとすれば、西洋のナポレオン・ヒルは外面的なアプローチ。両者全く違うアプローチをしていながらも、辿り着いた先は同じ。言葉や文化を鑑みると、日本人には天風著「運命を拓く」の方が親しみやすいのではないかと思います。
以下に両者の共通要素を見ていきます。
しかしてその核心部分とは、どの成功者にも、大谷翔平にも共通する法則なのではないかと思うと、ワクワクしてきませんか?
何が共通しているのか
両者共に最も大事とするのは「思いの力」。ナポレオン・ヒルの言葉で言えば、積極的心構え(PMA*)こそが自己実現の原理。ですが、この考え自体は何もヒルと中村天風の専売特許という訳でもありません。
*PMA=Positive Mental Attitude
経営の神様と言われる松下幸之助も「天分を見いだすの第一には、強い願いを持つこと。願いが強ければおのずと見出せる」と言っています。これは松下幸之助が天風の影響を受けた一面もあるかもしれませんね。
「記憶の固執」(チーズのように溶けて見える時計の画)で有名なダリは「人間は自分が考えているような人間になる」「天才を演じ切っていれば天才になれる」と言いました。はちゃめちゃエピソードも色々残る人で、とある展示会では無茶が祟って危うくシにかけたという話もあります。
ひとまず命は確保した上で、成功者には「強い思いの力」があることが分かってきます。
ナポレオン・ヒル「思いの力」とは
・信念と思考が合わさると、潜在意識が活性化され、モチベーションと限りない知性が生まれてくる
・潜在意識は恐ろしいほどの力を生み出す
・潜在意識に閃いた事は直ちに実行する、こと
そして深層自己説得こそが、現実化への原動力と説いています。初読では、思いを抱いただけで何かが変わるものだろうかと訝しんだ事もありましたが、外山滋比古さんベストセラー「思考の整理学」の要素も合わせると、なるほど納得できるものになりました。
簡単に言えば、一旦脳に必要な情報を入れておけば、無自覚の内に脳が整理してくれる。例えば、原稿や資料を作成する時も、締め切り当日に書くのではなく、あらかじめ何日か前に準備をすることが肝要だということです。
これはまさに潜在意識の力。自分にも経験があるのでよく分かるのですが、言わば「願望という材料を脳という鍋にぶち込んでおけば、勝手にアイディア料理が出来上がる」イメージ。(資料を作る際には、資料の元となるデータなどに目を通すことが脳への材料)
これをグレアム・ウォーラスという人は「怠惰思考」と呼びました。
1)課題直面
2)課題放置
3)休止期間
4)解決策を思いつく
どれも似ていますね。だから何かを考えたい時は机でウンウンするのではなく、散歩にでも出かけたら良い、という事にもなるでしょう。
同様の事が天風の書からも読み取れます。「心というものは、万物を産み出す宇宙本体の有する無限の力を、自分の生命の中へ受け入れるパイプ」であると説いています。
そのために言葉に気をつけましょうとも言っています。心が澄んでいないと、気に満ちた宇宙のパワーが身体に入ってこないそうです。「暑いなぁダルいなぁ」ではなく、「暑いなぁ、余計元気が出るなぁ」という風に。「ネガポジ変換」で検索してみてください。ネガティブをポジティブに言い換えてくれる便利な世の中です。
「宇宙の力」という言葉がたびたび出てきますが、神秘的だからと敬遠する事はありません。驚くことにナポレオン・ヒルも「大自然の法則」という言葉で同じような事を言っています。
また、両者共通してアフォメーションを紹介しています。具体的な内容は割愛しますが、ヒルのプログラムではカセットテープ(現在はダウンロードでしょうか?)が配られて暗記復唱できるようになっていたり、天風書にも誦句が入っています。
そのまま暗記するのも手ですが、時代や国の違いもあるので、自分の言葉で言うのがいいように思います。天風の言葉で簡単な例を紹介すると、鏡を前に「お前は信念、強くなる!」だったり、朝起きてにっこり笑って「今日1日この笑顔を壊すまい」という感じです。
スティーブ・ジョブズが毎朝鏡に向かって「今日が人生最後の日なら、何をする」と、己自身に問いかけていたという話も思い出されます。
成功者と言われる人に、紛れもない強い信念がある事は確かです。成長期に良い師を通じて良い書に出会った大谷少年。信念と深層心理の力が一役買ってないと誰が言えましょうか。「大谷選手になったつもり」で、信念の力を試してみてはいかがでしょう。