日本が誇る<文豪・夏目漱石>、世界のBookTubeに登場!

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夏目漱石と言って思い浮かぶのは?

教科書!こころ・坊ちゃん・吾輩は猫であるなど、作品を1冊読んでいなくとも、学校で必ず出会うと思います(国語の教科書のような漱石が、国語の教科書から外れると何かの本で読んだ事があるのですが、そんな事はないと信じたい)。

あるいは、
「I Love You」を「月が綺麗ですね」と訳したエピソードが有名でしょうか。
鎌倉・円覚寺に参禅したエピソードが思い浮かぶでしょうか。
長女の名前、筆子が古風なのに輝いて見えるでしょうか(これは漱石に憧れる自分)笑。

則天去私、木曜会、正岡子規との交流など、思いつくことは色々あるでしょうが、自分的には漱石の千円札が恋しいです。

千円札の顔

2023年時点の千円札は野口英世ですが、昨今はキャッシュレスで紙幣を使う機会がぐっと減ってしまい、昔にように今のお札の顔は誰?と聞かれてもなかなかすぐ答えられなくなった気がします。そのためか、自分が思いだす千円札はいまだ夏目漱石のイメージのまま。

調べてみると、野口英世がお札の顔なったのは2004年。漱石のイメージが強いと言っても約20年お世話になっていたようです。そして自分的には夏目漱石のイメージを抱えたまま、いよいよ新紙幣北里柴三郎へ移行(2024.7月〜)します。

偽造防止のために紙幣は刷新され続けますが、大好きな作家である夏目漱石が自分の千円札の記憶からなくなることはないでしょう。そしていずれ変わってしまうなら漱石の千円を保存しておけば良かった・・と貧乏根性が発揮されるこの頃。

現1万円札の諭吉も尊敬する大偉人の1人です。これまで1万円札の肖像になった事があるのは聖徳太子と福沢諭吉だけらく、今度変わってしまうと思えば思うほど自分の中でレア感が増してしまいます。好きな偉人がお札から消えてしまう前に今度こそは・・と思ってしまいますね。

お札の肖像になれる人

どんな人がお札の肖像に選ばれるのか調べてみました。国立印刷局の選定基準としては次の2つが掲載されています(https://www.npb.go.jp/ja/intro/faq/index.html)。

  • 日本国民が世界に誇れる人物で、教科書に載っているなど一般によく知られていること
  • 偽造防止の目的から、なるべく精密な人物像の写真や絵画を入手できること

歴代のお札になった人物は、実はたった17名(2024年の刷新で20名)。ずいぶん少ないイメージです。同じ人物が何度も印刷されていたり、2千円札の紫式部は国立印刷局HPでは、この17名に含まれていなかったり、といった事情もあるようです(2千円札裏面は源氏絵巻と紫式部)。

                 出典:国立印刷局

眺めて分かるように、実業家がほとんど。夏目漱石が一段と光って見えませんか?作家として選ばれる偉業、まさに作家の中の作家(作家としては樋口一葉を含めた2名のみ)。日本人として改めて、世界に誇る大人物・大作家です。

ちなみに新紙幣は、1万円札に渋沢栄一、5千円札に津田梅子、千円札に北里柴三郎ですので、やはり作家としてお札になっている事は重ねて偉業中の偉業なわけです。

漱石の文章とは

何がそんな凄いのでしょうか?

夏目漱石を教科書で読んだきり、学生で読んだきりになっている人は是非大人になってからの再読をおすすめします。最近「吾輩は猫である」を読み直して、その難解さに驚きました。

ずいぶん勝手なイメージで、子供向けの作品かと勘違いしていましたが、漱石特有の禅味も帯びていて、とても子供の頭でついていける内容ではないと感じました。だからこそ再読が楽しい。

個人的に感じている漱石の凄さは、その圧倒的日本語のパワーとでも言いましょうか。素人の自分がわざわざここで解説するのも烏滸がましいのでやめておきますが、読んだ時に感じる文章力。小説なので物語がありますが、物語ではなく、漱石の世界観、考え方、言葉の力にとてつもなく魅入られます。

ちなみに漱石は、2通りの小説の定義を残しています。

・筋の推移で人の興味を牽く小説
・筋を問題にせず1つの事物の周囲に躊躇低徊することによって、人の興味を誘う小説

(これだけで文章力が伝わってきませんか?)

漱石は後者の方の小説を書く、という事なのでしょう。前者の、物語を楽しむ小説ではなく、作家の頭の中を覗くための小説。

文豪・三島由紀夫も「小説とは」を残しています(柳田國男「遠野物語」の解説より)。

・現実化する根源的な力(長たらしい抒述から生まれるでなく、1行に圧縮されていれば充分)
・小説に告白をしか求めない人は、言語表現が人に強いる内的体験と言うものを軽視している
・言語表現力の一種魔的な強さ、その凝縮力、平たく言えば、文章の力

それぞれの価値観が表れていて、どちらも頷けます。共通するのは「言葉の力」。物語に重きを置くというよりは、気づきや発見、思考・論理、消化するのに頭をウンウンする事。

天才の頭から紡ぎ出される至極の文章は、凡人の頭で理解が追いつかない事もしばしば(でもそれで良いんです!天才の頭に凡人がついていけないのは当たり前でしょう)。頑張ってウンウンしても分からない事もある、それも読書体験の一つ、決して無駄にはなりません。

頭の体操をしたということで前進するのも良いのではないでしょうか。「百冊で耕す」著者の近藤康太郎氏によれば「難解な文章を読むことはもはや目の上下運動」と言い切っておられて爽快です。

難しい筆頭の哲学書にストーリーはありませんが、小説だから少なくともストーリーがあります。展開を楽しみながら、頭の体操までできてしまう。こういう魅力もあるわけです。

そして分からなかった事というのは記憶に残ります。忘れたと思っていても、脳の何処かには残っていて、何かをきっかけに、そういえば難しい所が合ったなと思い出す。

心理学でいうツァイガルニック効果(終えてしまった事柄よりも、途中で挫折してしまったり中断してしまったりした事柄のほうがよく記憶に残る心理現象)に近いですね。

思い出したらまた挑戦してみれば良いのです。

初期三部作のご紹介

漱石作品はどれもお勧めしたいですが、ここでは頭の体操にもってこいだと思う初期三部作「三四郎」「それから」「門」をご紹介しましょう。頭がハッキリしている時でないとなかなか読み進まないんですよね(ちなみに処女作は「吾輩は猫である」です)。

齋藤孝先生による三部作の秀逸なおまとめはこちら(「牛のようにずんずん進め」より)

立身出世を目指して上京したものの、迷える子羊(ストレイシープ)となる「三四郎」。「それから」では、定職につかず代助が親友の妻を奪おうとし、「門」では親友から妻を奪った宗助が、罪悪感から夫婦で社会から逃れるようにひっそりと暮らす苦悩や悲哀が描かれる。

ではそれぞれのオススメ所を紹介していきます。

三四郎

熊本の田舎から東京へ出てきた書生「三四郎」の恋物語。読んでいて快活になる所や、思わずクスッとなってしまう表現が好き。森鴎外が「青年」を書く動機にもなったそうで、共通の話題が見られるのも面白い。

双方に登場するのは利己主義や利他主義についての文学談義。話の筋とは関係ないですが、意見を戦わすところに漱石の頭の中が現れているようで、読む事自体がチャレンジング。誠に勝手に先生(漱石)と生徒(自分)になった気で読むと楽しい。

談義の内容を一つずつ噛み砕いては消化して、を繰り返す。自分がその場にいたら議論に加われるだろうか、自分だったら何を言えるだろうかまで考えてみる。こういう楽しみ方もできわけです。

難しいは難しい。ただ、談義がいくら難しくとも、ストーリーとは直接関係ないため、ついていけなくても物語の進行には全く影響ありません。

それから

並びとしては2作目ですが、独立した話なので単独で読んでも完結しています。働かずに暮らす30過ぎの遊民が、かつては友達に譲った意中の人を略奪するに至るお話。

ドロドロもありますが、自分が好きなのはやはり物語というよりも「言葉」。鋭い洞察はもちろんですが、特に好きなのは腹の座った会話

先ほどの齋藤孝先生の著からもう一つ引用「腰胎(こしはら)は日本文化の核」。

“武道、茶道、華道、能、歌舞伎などの日本の芸道は、臍下丹田(せいかたんでん)と言われる臍の下を中心にして精神を落ち着かせることを重じる“

腹が座った会話ができるのも、腰胎文化からくるものでしょうか。会話に一種の覚悟が感じられて、読んでいると気持ちがスッとして心地良いんですよね。

冒頭で書いた、27歳の漱石が鎌倉・円覚寺に参禅した時の経験から生まれた作品。難しい「禅の世界」がたくさん出てきますが、漱石自身は悟りを開くことができずに短期間の滞在となったとか。

漱石の故郷新宿に「漱石山房記念館」があります。自身が行った時にはちょうど夏目漱石の参禅をテーマにした展示があって、本人がこんな文章を残しているのを目にしてきました。

問答のために問答をするのは議論のために議論をするのと同じく酔狂の沙汰なり。禅坊主にはこの癖ありとみゆ。愚かなる問答なすよりあくびを一つする方が心持ちよきものなり。

悔しさもあったのかもしれませんが、そんな事お構いなしに一喝。これぞ私が好きな快活さです。

作品に戻れば、

自分は門を開けてもらいに来た。けれども門番は扉の向側にいて、叩いてもついに顔さえ出してくれなかった。「ただ叩いてもダメだ、1人で開けて入れ」。

漱石自身が「主人公は門の下に立ちすくんで、日の暮れるのを待つべき不幸な人だった」と表現しています。ただ、記念館の展示にあるように「彼は門を通る人ではなかった。また通らないで済む人でもなかった」のでしょう。

BookTube〜好きな本ベスト10〜

最後はいつものBookTube。我らが日本代表・夏目漱石を好きな作品に上げてくれた人がいました!Jenny Mustardさん「The Top 10 Books Of All Time! (an extreeemely essential reading list)」です、どうぞ✨

1.
こころ、夏目漱石
“Kokoro” by Natsume Soseki


レシタティフ(短編)、トニ・モリスン
“Recitatif” by Toni Morrison
*短篇コレクションI (池澤夏樹=個人編集 世界文学全集 Ⅲ-05)に収録

3. 
未邦訳、アンナ・メトカルフェ
“Chrysalis” by Anna Metcalfe

4. 
友達、シーグリッド・ヌーネス
“The Friend” by Sigrid Nunez

5. 
ダロウェイ夫人、ヴァージニア・ウルフ
“Mrs. Dalloway” by Virginia Woolf

6.
アウトライン(三部作)、レイチェル・カスク
「愛し続けられない人々」「ロンドンの片隅で、一人の作家が」「二つの旅 いくつもの人生」
“Outline”(Trilogy) by Rachel Cusk

7. 
未邦訳、ナターシャ・ブラウン
“Assembly” by Natasha Brown

8. 
悲しみよこんにちは、フランソワーズ・サガン
“Bonjour Tristesse” by Françoise Sagan

9. 
未邦訳、ジーン・リース
“Good Morning, Midnight” by Jean Rhys
*「20世紀イギリス短篇選」に一部作品収録

10. 
巨匠とマルガリータ、ミハイル・ブルガーコフ
“The Master and Margarita” by Mikhail Bulgakov

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