読んだら世界が変わる?最強SFで振り返る壮大スケールとアニメの世界

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世界の名だたる「経営者にはSF(Science Fiction)好きが多い」と聞きます。「読んだら世界が変わる」とも聞きます。果たしてそれはなぜなのでしょうか?

SFを読んだ事がない人でも、アイザック・アシモフという名は聞いたことがあるかもしれません。アーサー・C・クラークやロバート・A・ハインランと共に、SF御三家と呼ばれたりしますが、令和に突入した今では古典SF御三家と呼んだ方がいいのかもしれません。

つまり古いんでしょ?

とんでもない。古典SFの凄さが実感できるのは今時代を予測していたかのような内容が見え隠れする点が面白く、作家の凄みを実感できます。発売当時は遠い未来の話だったとしても、現代の私たちから見るからこそ、ある部分を歴史として実感できるのが驚きです。

今回はSF界の巨匠アイザック・アシモフをピックアップ。SF分野で名高いヒューゴー賞を7回も受賞した伝説の人。代表作の一つ「ファウンデーション」がどんな話かを紹介しながら、最初の疑問の答えを探っていきます。SFを読んだ事がない方へ、面白さが伝われば幸いです。

後半はいつものBookTube紹介、SF好きならアシモフはやはり外せない?
SF好きな人もそうでない人にも、新たな発見がありますように✨

SF界の巨匠アイザック・アシモフ

アイザック・アシモフ(Isaac Asimov)は、1920年にロシアに生を受けますが、3歳の時に家族と共にアメリカへ移住。幼い頃から成績優秀、15歳には飛び級でコロンビア大学へ入学し、化学の博士号を取得しています。

知能指数が人口上位2%しか入会できないメンサ会員でもありました。一時副議長を務めた事もあり、イギリスでは同じくメンサ会員であったアーサー・C・クラークと共に講演も行ったそうです。

SF黄金時代の中心的な存在であり、未来のテクノロジーや人間の性質についての洞察、思考実験を提供したりと、魅力的な作品を多数生み出した秀才です。

特に有名なのは「ロボットシリーズ」や「ファウンデーションシリーズ」。

ロボットシリーズは、1950年刊行の「われはロボット」に代表されます。2004年にウィル・スミス主演で映画化「I, Robot」(アイロボット)されており、ご存知の方も多いのではないでしょうか。

映画と原作ではやはり内容は異なりますが、映画は映画、原作は原作でどちらも面白く、個人的にはどちらも好きです。

作中で鍵となるのは「ロボット三原則」。
1、ロボットは人間に危害を加えてはならない
2、第1原則に反しない限り、ロボットは人間の命令に従わなくてはならない
3、第1、第2原則に反しない限り、ロボットは自身を守らなければならない

ロボットは原則を守りさえすれば自身で考え行動できる。オープンAIが盛り上がっているのはまさに今。AIと人との関係について洞察を与えてくれる本作は、現在でもその古さを全く感じさせません。これが本当に1950年に刊行されたのかと思うと、やはり驚きです。

代表作「ファウンデーション」はこんな作品

銀河系全体に進出した人類、ハイパースペース・ジャンプを用いて恒星間を自由に行き来する超宇宙時代。ところが心理歴史学者ハリ・セルダンは「1万2千年にわたって存続してきた銀河帝国は衰退する」と宣言。銀河帝国の衰退と再興の物語が、超絶長大スケールで描き出されます。

ポイントを3つに絞ってご紹介していきます。

ポイント①心理歴史学

心理歴史学とはアシモフの造語で、実際には存在しませんが、物語の軸となる学問。大規模な社会の動向は統計学的に予測可能だとするものです。様々な章で実に様々な人物が登場、混迷する世界で、彼らなりの戦いをしていくのですが、全てはセルダンの、予め用意されたレールを辿るという世界観。

そこでふと考えます。果たしてそんなことは現実に可能だろうか。

陰謀論と言われる論によれば、現実世界にも黒幕が存在していて「世界の大きなうねりは彼らが生み出している」。フリーメーソンやロスチャイルド家はよく聞く筆頭です。ここで詳しくは触れませんが、ある規模の組織や莫大な権力の持ち主が存在するのは確かなこと。

世界が彼らの思い通りだとして、果たして思う通り進むでしょうか。ブラジルで1匹の蝶が羽ばたいたら、テキサスで竜巻が起こるのでしょうか?バタフライ効果がカオス理論と呼ばれるように、実際にはいくつもの要因がありすぎて、AだからBが起きるという因果は確定しにくいのが現実です。

因果推論」という学術分野があるように、現実はあくまで「推論」なんですね。この分野の専門家が成田悠介氏だということを最近知って興奮したのは自分だけでしょうか。

ポイント②超絶長大スケール

自身が読んだ文庫の帯には「壮大スケール」「圧倒的スケール」で描かれる!と紹介してありました。ふむふむ、超宇宙時代なんだからまぁそうなんだろうと、読む前は思っていました。

が、この「スケール感」は舞台が宇宙というだけに留まりません!これが本作の魅力の一つであり、圧巻の要素だと思うのですが、読み慣れるまでついていくのが難しいポイントでもあると思っています。

ネタバレは控えるので遠回しの言い方になるのをご容赦願いますが、本作にはハリ・セルダンという影の主人公はいますが、表の主人公は何人か登場します。相当数の登場人物が出てきますので、誰が今の主人公なのか。この人は敵か味方か。見分けるのにやや苦労します。もちろん後から後から分かってくるので、読み進めれば面白いのですが、展開についていけるまでは登場人物のメモをお勧めします。

1章から2章に進んだ時に、1章のあの人はどこへ行ったのだろう?と最初は疑問に思うのですが、章が進むごとに何世代か時代も進んでおり、主人公も変わっているというのが分かってきます。それが本作の「スケール」のデカさ。非常に長い時間軸で描かれた作品で、とんでもなく「壮大な」話なのです。

ポイント③まさか・・?

(ここからは完全に自分の妄想)

冒頭の紹介文に「1万2千年続いた銀河帝国」と書きました。ここでピン!と来た方はどれぐらいみえるでしょうか。

どこか聞き覚えのある数字…!!

1万年と2千年前からあ・い・し・て〜る〜♫」

全くの偶然かもしれませんが「創世のアクエリオン」という有名なアニソンの歌詞ではありませんか!アニメを全作見たわけではありませんが、一度聴いたら耳に残るこの名曲!!

無限の数字の中から「1万2千」が偶然一致するとはとても思えず…作詞した方はきっと「ファウンデーション」ファンだったのだと、勝手に思っています。

(その後、ゾロアスター教でも現世が1万2千年続くという教えがあることを知りました。24.11月追記)

そしてもう一つ。

本作にはフォース・フィールドなる技術が登場します。原子力を使った防護フィールドなのですが、あのアニメを知っていれば誰しもが「ATフィールド」を想起するのではないでしょうか…。

イエス、エヴァンゲリオンですね。
という事でエヴァ作者も「ファウンデーション」のファンだったかもしれない、と。

全くアニメを知らない方向けにですが、アクエリオンもエヴァンゲリオンもロボットものであり、多分にSF要素を含みます。アニメ要素は本作にはありませんが、どこか彷彿とさせる所も、SFの楽しみの一つではないでしょうか。

アニメ大国日本だからこそ、以上の「まさか」だけでなく、ひょっとしたらアニメの原点かもしれない事を、SF作品に見る事も多いにあると思います。

アニメだけでなく、レビューによれば最近話題の「三体」につながる要素もあるようです。筆者まだ「三体」は未読ですが、これを知ったらちゃっかり読んでみたくなりました。

本題である最初の疑問からややずれてしまったので、戻って真面目に考えてみましょう。
・なぜ経営者にはSF好きが多いのか
・SFを読むと世界は変わるのか  、この2点を冒頭に挙げていました。

アシモフの「ファウンデーション」を読んで驚くのは視野の広さです。宇宙という舞台、何世代にも渡る物語のみならず、政治・宗教・経済も物語のポイントになってきます。常に広く大きく、遠くから見るとどう見えるのか。ビッグピクチャーが見える人が支配者になっていく世界が描かれています。

このように書くと、なんとなく2つの疑問に頷ける気がしませんか?経営者だからSFが好きなのか、元々視野を広く見渡せる人だから経営者になったのか、これは因果推論の難しい問題ではありますが。

さて、「ファウンデーション」は2021年Apple TV+でドラマ「ファウンデーション」として映像化・独占配信されました。舞台設定などは異なるようですが、気になる方は是非チェック。

「ファウンデーション」シリーズ

先に紹介したのは第1作「ファウンデーション」のみ。第1作のみでも物語は完結していますが、シリーズとしては全7タイトル出ています(「銀河帝国の興亡」「銀河帝国興亡史」でも発行)。

特に1巻から3巻は3部作と呼ばれ、ヒューゴー賞「ベストオールタイムシリーズ部門」を受賞、4巻もヒューゴー賞「長編小説部門」を受賞しており、まさに化け物シリーズです。

以下はハヤカワ文庫「ファウンデーション」タイトル及び(アメリカでの発行年)

  1. ファウンデーション (1951年)
  2. ファウンデーション対帝国 (1952年)
  3. 第二ファウンデーション (1953年)
  4. ファウンデーションの彼方へ (1982年)
  5. ファウンデーションと地球 (1986年)
  6. ファウンデーションへの序曲 (1988年)
  7. ファウンデーションの誕生 (1993年)

「新銀河帝国興亡史」というシリーズも出ていますが、これはアシモフ没後に、妻らの要請によって書かれた3人のアメリカ人作家による3部作です。影の主人公とも言われるハリ・セルダンの半生を描いた作品になっています。

「新銀河帝国興亡史」タイトル(及び作者)

  1. ファウンデーションの危機(グレゴリイ・ベンフォード)
  2. ファウンデーションと混沌(グレッグ・ベア)
  3. ファウンデーションの勝利(デイヴィッド・ブリン)

BookTube〜SF好きが選ぶ、おすすめSF〜

魅力たっぷりの「ファウンデーション」をおすすめ作品に挙げているBookTubeを2つご紹介します。

1つ目は、Jared Hendersonさん、哲学的な問いを含むSF7選
2つ目は、Sci-Fi Odysより、SF好きによるマストSF5選

Hendersonさんは普段は哲学関係のBookTubeがメインなのですが、ガンダムを好きな人が「ガンダムには全てが含まれている」と言うように、「SFには全てが含まれている」と、言っても良いのではないでしょうか。

①:7 Philosophical Science Fiction Novels You Need to Read(10:10)

  • デューン・砂の惑星、フランク・ハーバード
    Dune by Frank Herbert

  • ソラリスの陽のもとに、スタニスワフ・レム
    Solaris by Stanislaw Lem
  • クラウドアトラス、デイビッド・ミッチェル
    Cloud Atlas by David Mitchell

  • ファウンデーション、アイザック・アシモフ
    Foundation by Isaac Asimov

  • 黙示録3174年、ウォルター.M.ミラー.Jr.
    A Canticle for Leibowitz by Walter M.Miller Jr.
  • 未邦訳、ニール・スティーヴンスン
    Anathem by Neal Stephenson
    *他に「スノウクラッシュ」

  • フランケンシュタイン、メアリー・シェリー
    Frankenstein by Mary Shelley

②:5 must read space opera(10:31)

  • ファウンデーション(シリーズ)、アイザック・アシモフ
    Foundation by Isaac Asimov

  • 啓示空間(シリーズ)、アレステア・レナルズ
    Revelation Space by Alastair Reynolds

  • タウ・ゼロ、ポール・アンダーソン
    Tau Zero by Poul Anderson
  • 巨獣めざめる、ジェイムズ・S.A. コーリー
    Leviathan Wakes by James S.A.Corey

  • 未邦訳、イアン・バンクス
    Consider Phlebas by Iain M.Banks
    *他に「蜂工場」「ゲーム・プレイヤー」など

私たちの母国語、日本語小説とは勝手が違う海外SF。翻訳によっては読みづらい箇所もあるかもしれません。ですがそこも読書の醍醐味。1字1句丁寧に味わうというよりも、世界観を味わう

概要の把握から登場人物が言いたい事まで、読解力を伸ばすのに最適だったり、既存の世界を広げてくれるSFは、世の天才たちが愛して止みません。

これまでSFを手にしてこなかった方が、この機会にチャレンジしてみようと思って頂けたら、こんなに嬉しいことはありません✨

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